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日本への最も安い入口は、東京にはない:横浜は外国企業のオフィスに最大5億円を充てる――そして今夏の進出組は、その扉を通っている

Medusa Japan
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主なポイント

  1. 1JETRO自身の2026年7〜8月の進出記録は、外国企業が都心の外に着地していることを示している。8月31日にShibuLA Ventures(米国)が横浜へ、8月5日にPlanar Motor(カナダ)が神奈川へ、7月30日にBrainSpoke(タイ)が世田谷区へ。TSMCグループのGlobal Unichip Japanも事業拡大に伴い横浜へ移転した。
  2. 2横浜市は外国企業に対し、本社機能・研究開発拠点の賃借に最大5億円の税制優遇、購入・建設に最大50億円の助成、さらに成長産業立地促進の枠で最大250万円を用意している。
  3. 3神奈川県はJETRO横浜と連携し、IBSC神奈川のオフィスを50営業日間無償で提供し、進出経費の半額を上限200万円まで補助する。司法書士費用、翻訳費、登記住所の初期数か月分をまかなえる水準である。
  4. 4マクロ環境も稀に見るほど追い風だ。1ドル157円近辺の円安は、ドルやユーロで資金を持つ企業にとって円建ての設立コストを歴史的な安値にしている。対内直接投資残高は53.3兆円と過去最高、グリーンフィールド投資は316億ドル(前年比15.4%増)、政府は2030年目標を120兆円へ引き上げた。
  5. 5補助金が払うのは床であって、顧客ではない。日本における本当の摩擦は、書類が重く、日本語で、物理的な所在を求める設立手続きにある。そして横浜の住所はアクセスを何も損なわないが、福岡や札幌の住所は損なうかもしれない。まず買い手がどこにいるかで地域を選び、その上で補助金を取りに行くこと。

六週間の進出記録、誰も発表していない傾向

JETROは、日本に進出・拡張した外国企業を掲載する公開ニュースルームを運営している。誰かが演出するようなPRチャネルではなく、読み心地は積荷目録に近い。だからこそ役に立つ。2026年9月初旬までの六週間分をたどると、住所が繰り返され始める。

8月31日、米国のエコシステム開発企業兼ベンチャースタジオShibuLA Venturesが神奈川県横浜市へ進出。8月24日、Eventus Hong Kong Limitedが医療IoTプラットフォームのため東京に子会社を設立。8月5日には同日に二件――磁気浮上式搬送ロボットシステムを手がけるカナダのPlanar Motorが神奈川県に営業所を開設し、スタートアップ支援向けオンラインイベント基盤を提供する米国のNexus Eventsが東京にオフィスを構えた。7月30日には、脳波計測ウェアラブルとAI解析を組み合わせるタイのBrainSpokeが東京都世田谷区に日本法人を設立している。年初来では、iPS Bioが横浜市に日本法人を設立し、TGL Solutionsが建設DXの拡大に向けて横浜に拠点を置き、TSMCグループの設計専業GUCの日本法人であるGlobal Unichip Japanが事業拡大に伴い横浜の新オフィスへ移転した。

数えてみてほしい。住所が明示された案件のうち、市場進出のパンフレットが勧めるであろう東京都心の区よりも、神奈川県――とりわけ横浜市――に着地した数のほうが多い。しかも登場する東京の案件も、丸の内や六本木ではない。BrainSpokeが選んだ世田谷区は、企業としての発信力がほぼ皆無で、賃料もそれ相応の住宅地である。台湾のリアルタイム音声翻訳企業VMFiは中央区を選んだ。都心ではあるが、華やかさとは無縁の場所だ。

「首都圏の家賃に弾き出された小さな企業ばかりだろう」と読むのが自然に見える。だがその読みは誤りで、リストにGlobal Unichipが並んでいることがその証拠だ。同社はTSMCグループの一員であり、東京のどのフロアでも借りられる会社である。それでも意図して横浜を選んだ。ほかの各社も同じだ。彼らが反応したのは、日本進出を計画する大半の外国企業が一度も見せられたことのない提示条件である。

自治体が実際に払っているもの

まず横浜市から見るのがよい。最も攻めているからだ。同市は外国企業に対し、本社機能や研究開発拠点として床を賃借する費用に対して最大5億円相当の税制優遇を、購入・建設には最大50億円の助成を提示している。加えて、対象分野の企業には成長産業立地促進の枠で最大250万円が用意される。資金面だけでなく、実証実験(PoC)支援プログラムや、海外スタートアップと日本企業を引き合わせる「横浜マッチングプログラム」も運営しており、初年度から強い関心を集めた。

横浜市を擁する神奈川県は、その上にもう一層を重ねる。JETRO横浜と連携して運営する「IBSC神奈川」では、外国企業が50営業日間、無償でスタートアップオフィスを利用できる。さらに進出経費の半額を上限200万円まで補助する。50億円の建設助成に比べれば見出しにはなりにくいが、実際に日本へ入ってくる規模の企業にとっては、こちらのほうがはるかに効く。

200万円と50営業日分の無償オフィスが、具体的に何をまかなうかを考えてほしい。日本法人――株式会社であれ合同会社であれ――の設立には、公証人の認証を受けた定款、登記可能な物理的住所、登記手続きを担う司法書士、親会社書類の認証翻訳、そして会社実印が要る。多くの初回進出はまさにこの請求書で止まる。そしてその金額帯は、これらの制度が補助する範囲とぴたりと重なる。加えて50日間の無償オフィスは、あらゆる外国企業がぶつかる鶏と卵の問題を解く――法人登記には住所が要るが、多くの貸主は法人格ができるまで賃貸借契約に署名したがらないのだ。

横浜の提示額の上限は、別種の相手を想定している。設備投資を伴う製造拠点や研究拠点だ。だが、自社が到達しない水準であっても、その上限が発している信号は読む価値がある。外国企業の建物に50億円を認める市とは、経済局が「外国企業の誘致は優先事項である」と文書で指示されている市だということだ。それは補助金以上に価値のあるものに転化する。すなわち、「イエス」と言う動機を持った行政組織と、あなたの進出そのものが業績評価の対象になっている人々が座るワンストップ窓口である。

なぜ今年、算盤が変わったのか

この種の補助制度自体は新しくない。新しいのは、それが建てられている為替水準のほうだ。円は1ドル157円近辺で推移しており、これは8月初旬以来の水準である。ドルやユーロで日本進出の資金を持つ企業にとって、円建てのコストは――司法書士報酬も、敷金も、初年度の人件費も、オフィスそのものも――歴史的に安い。200万円の補助は円で見れば三年前と同じ価値だが、それが相殺する費用のほうは同じではない。

第二の変化は、政策の方向が丁重な奨励から「紙の上の数字」へ移ったことだ。日本の対内直接投資残高は2024年末時点で53.3兆円、前年比4.5%増の過去最高を記録した。買収ではなく新規拠点であるグリーンフィールド投資――JETROのリストに並ぶ企業の大半がこの区分に入る――は316億ドル、15.4%増で、データセンターと物流施設が目立った。2025年6月、政府は2030年の対内直接投資残高目標を100兆円から120兆円へ引き上げ、2030年代前半のできるだけ早い時期に150兆円を目指す方針を示した。大づかみに言えば、政府は十年のうちに日本における外国企業のプレゼンスを倍以上にすると約束したのである。都道府県・市の予算は、その実行手段だ。

第三の変化は、以上に動く価値があるかどうかを決める要素、すなわち需要である。日本企業が買わないのなら、優遇制度に意味はない。6月短観では、大企業非製造業の業況判断DIがプラス37――1991年以来の水準――、大企業製造業がプラス22で五・四半期連続の改善となった。日本企業は健全であるだけでなく、自信を持っている。読者はお気づきのとおり、先週の記事では、その自信と実際の設備投資(4-6月期は前期比マイナス1.2%)との乖離を扱った。この乖離は実在し、提案書の組み方を今なお規定する。だがそれは支出のタイミングの乖離であって、買い手の不在ではない。

三つを重ね合わせると、この窓の形が具体的に見えてくる。外貨換算で設立コストは安く、公的部門が固定費を積極的に補助し、顧客層はこの三十年で最良の気分にありながら、署名は遅い。これは、燃焼率を抑えた辛抱強い進出にとってほぼ理想的な配置であり、四半期四回で自らを正当化しなければならない高額な旗艦拠点にとっては最悪の配置である。

その資金が買ってくれないもの

優遇制度のパンフレットが省いている部分がここにある。日本の摩擦は、そもそも規制が主因ではない。経済の大部分で外資規制はなく、利益の本国送金も自由で、会社形態もよく理解されている。摩擦は事務手続きにある。書類が重く、届出は日本語でなければならず、設立には物理的な要件があり、コンプライアンス手続きは、スライド上では数日に見えた工程表に数週間を足すだけの詳細さを持つ。200万円の補助は、その作業の請求書を払ってくれる。だが作業を短くはしないし、代わりにやってもくれない。

補助金は需要も生まない。私たちが最も頻繁に見る失敗の型はこれだ。着地コストの最小化で進出設計を最適化し、気前よく払う自治体に拠点を置き、そのあとで買い手が全員東京にいて、訪問されることを期待していると気づく。横浜はこの問題を免れている。品川から三十分足らずで、横浜の住所が外国企業のアクセスや信用に与える損失は実質的にゼロだからだ。製造業と大学が集積する京都も、分野が合えば同様に擁護できる。だが顧客から三時間の場所となれば、助成の額がどうであれ話はまったく別になる。住所が買い手から遠ざかるほど、その補助金は「間違った場所にいること」に静かに対価を払っている。

最後に、この資金には細則を読む価値のある条件が付く。対象分野の指定、雇用人数の要件、最低入居期間、そして場合によっては「移転ではなく新設であること」といった要件だ。公表されている金額は上限であって提示額ではなく、横浜市の資料自体が、現行条件については経済局企業誘致担当への照会を促している。本稿のいかなる数字も、予算書の一行としてではなく、経済局との会話の出発点として扱っていただきたい。

これは資金を取りにいくなという議論ではない。順序の議論である。まず顧客がどこにいるかを決め、登記経験のある人物と会社形態と工程表を確認し、そのうえで「どのみち下すつもりだった判断」に合う制度はどれかを問う。着地点そのものを変えてしまう補助金は、精査すべき補助金だ。すでに選んでいた着地に払われる補助金は、ほぼ無償の資金である。

この判断をどう回すか

地図からではなく、買い手から始めること。初年度に顧客として最も獲得したい二十の組織を書き出し、その本社所在地を調べる。うち十五社が東京の都心区にあるなら、探索半径は東京―横浜の回廊であって、それ以上ではない。移動時間そのものが商品だからだ。大阪・京都・神戸に集まっているなら――製造業、素材、精密部品、食品ではよくあることだ――関西の制度を同じ厳しさで精査すべきであり、その場合はむしろ東京の住所こそがアクセスの損失になる。

次に、貸主より先に地域に当たること。JETROの地域拠点や自治体の企業誘致部門は、「まだ決めていない企業」から連絡が来ることを前提に存在している。そして早い段階の会話でこそ、自社が実際にどの制度の対象になるのか、現行の条件は何か――2022年のパンフレットに書いてあることではなく――が分かる。問うべきは三つだ。自社が最も引っかかりそうな要件はどれか。申請から交付までの現実的な期間はどれくらいか。そして、昨年これを通った外国企業を紹介してもらえないか。

補助金が「積み荷」ではなく「上振れ」になるように進出を設計すること。無償のインキュベーション期間――神奈川の50営業日は本物の助走になる――を使って法人設立を終え、最初の現地社員を採用する。そして助成については、書面で確定するまで何も前提にしないこと。日本で生き残る進出とは、月次の燃焼率が十分に低く、初年度に築いた関係がようやく成約に変わる三年目にまだそこにいられる進出である。

これは私たちMedusa Japanが実際に手がけている仕事であり、東京ではなく大阪に拠点を置いている理由も、本稿の論旨そのものだ。日本のどこに着地するかは、たいてい惰性で決まる――誰もが名前を知っている街区のサービスオフィス、という具合に。だがそれは、うまくやるのは安く、やり直すのは高くつく数少ない初期判断のひとつである。制度は公開され、窓口はメールに返信し、そして今年は為替があなたの代わりに仕事の一部を引き受けている。JETROの8月のリストに載った企業が、あなたの会社より賢いわけではない。彼らはただ、賃貸借契約に署名する前に、提示条件を読んだだけだ。

よくある質問

横浜や神奈川の住所は、東京の企業に売り込むうえで不利になりますか。

実務上、不利にはなりません。横浜は東海道線で品川から三十分足らずであり、日本のビジネス関係が実際に要求する移動圏内に収まります。しかも郊外ではなく、それ自体が大都市です。この問いが本当に効いてくるのは、二、三時間かかる立地の場合です。そこでは関係維持の移動コストが現実の負担になり、気前のよい補助金が、結果として「顧客にとって不便な場所にいること」への対価になってしまいます。判断基準は知名度ではなく、火曜の朝に木曜の面談を打診されたとき、それが一日を潰さずに受けられるかどうかです。

これらの優遇制度は小規模な外国企業でも使えますか。それとも大型投資家だけのものですか。

両方の階層が存在し、大半の進出企業に関係があるのは小さいほうです。横浜市の50億円の建設助成や5億円の賃借優遇は、相当規模の本社機能や研究開発投資を想定しています。一方、神奈川県の50営業日の無償オフィスと、進出経費の半額を上限200万円まで補助する制度は、まさに初めての現地法人設立――定款認証、司法書士報酬、認証翻訳――の規模に合わせて設計されています。JETROの直近の進出リストに並ぶ企業は、圧倒的に後者です。ただし対象分野の指定や、場合によっては「新設であること」といった要件が依然として適用されるため、公表された上限額から逆算するのではなく、担当部局に現行条件を確認してください。

円安のいま、日本進出には好機ですか、それともリスクですか。

それは資金がどちら向きに流れるかで完全に決まります。外貨を使って日本での体制――オフィス、給与、法人設立、現地マーケティング――を築く段階であれば、1ドル157円近辺の円安はそれらのコストを歴史的な安値にします。これが「いま進出する」根拠です。一方、円で売上を得て本国に送金するモデルであれば、同じレートは出口で不利に働きます。多くの初回進出は二、三年は資金の純支出側にあり、だからこそ現在のレートは「収穫」ではなく「着手」に味方します。誠実に言い換えれば、為替が下げてくれるのは選択肢を持つコストであって、事業そのもののリスクではありません。

日本法人の設立には、現実的にどのくらいかかりますか。

週単位ではなく月単位で見積もってください。法定手続き自体はボトルネックではありません。詰まるのは添付書類のほうです。公証人の認証を受けた定款、申請前に確保した登記可能な物理的住所、親会社書類の認証付き日本語訳、会社実印、そして登記を担う司法書士が必要で、届出は日本語でなければなりません。多くの場合、最も長い工程は銀行です。新規登記された外資系法人の口座開設は、登記そのものよりかなり時間がかかることがあります。神奈川県の50営業日の無償インキュベーション拠点が、一見以上に有用なのはまさにこの点です――法人がなく、したがって賃貸借契約も結べない期間に、活動の起点となる登記可能な住所を与えてくれるからです。

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Medusa Japanは大阪を拠点とするクリエイティブエージェンシー兼AIプロダクトスタジオで、日本とグローバル市場間のクロスボーダービジネス戦略を専門としています。

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