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週刊ノート · 日本市場参入 · 投資 · 規制

: 外資による日本企業の買収は9月までに過去最高の6.2兆円――その一方で政府は「誰が買い、誰が住み、誰が所有するか」のハードルを上げた

RECOFのデータ(10月13日報道)によると、2026年1〜9月に外国企業・ファンドが買収した日本企業は326社、金額は約6.2兆円に達した。前年同期比40%増で、すでに2025年通年を上回る。今週はフランスのナティクシスが東京のM&Aブティック、産業創成アドバイザリーの買収で合意し、この流れに加わった。しかし同じ秋、政府は「脇の門」を次々と締めている。5年間の事後介入権を含む新しい外為法の審査制度が2027年1月4日に始まる。永住許可の手数料は10月1日に20倍の20万円となり、10月5日からは不動産登記で所有者の国籍が記録されるようになった。経営・管理ビザには3,000万円の資本金が求められる。本稿では、二つの速度がどうかみ合うのかを整理し、日本で買収・事業立ち上げ・採用を進める外国企業のための90日プランを示す。

公開日
金曜日
読了時間
12分
4章 · 4問
執筆
ナン・ジラルダン
Medusa Japan 創業者・大阪
言語
日本語
ほかの言語 EN · FR · ES · DE
1〜9月に外国企業・ファンドが買収した日本企業
3261〜9月に外国企業・ファンドが買収した日本企業
買収金額。40%増で、すでに2025年通年を上回る
6.2兆円買収金額。40%増で、すでに2025年通年を上回る
2025年末の対日直接投資残高(過去最高)
61.2兆円2025年末の対日直接投資残高(過去最高)
改正外為法の審査ルールが1月4日に施行
2027改正外為法の審査ルールが1月4日に施行

要点

押さえておきたい5つのこと

  1. 01対日M&Aは過去最高のペースにある。RECOFのデータ(10月13日の日経報道)によると、2026年1〜9月に外国企業・ファンドが買収した日本企業は326社(20%超増)、金額は約6.2兆円(40%増)で、すでに2025年通年を上回った。日本のM&A総額は20%減の22兆円にとどまっている。対日直接投資残高は2025年末に過去最高の61.2兆円となり、1年で7.9兆円増えた。
  2. 02グローバル金融機関は「買収」で日本のM&A市場に入ろうとしている。10月20〜21日、ナティクシスは東京のブティック、産業創成アドバイザリーの買収で合意した。金融庁の承認が条件で、社員は2027年1月1日にナティクシスの日本チームに加わる。シティグループ、ゴールドマン・サックス、UBSも東京で幹部級のバンカーを増やしている。
  3. 03審査は「閉じる」のではなく「鋭くなる」。改正外為法は2027年1月4日に施行される。日本企業の支配権が変わる海外での取引にも事前届出が必要になる場合があり、届出のない一部の取引には5年間の事後介入権が生まれる。指定業種は、サイバーセキュリティ、クラウドとデータセンター、AIと先端ロボティクスといった「機能」を軸に組み直される。
  4. 04日本に「とどまる」コストは上がった。10月1日から永住許可の手数料は20万円(従来1万円)、在留期間の更新・変更は3.3万〜7.5万円になった。10月5日からは、新たに所有者となる個人の国籍が不動産登記に記録される(法人は対象外)。経営・管理ビザの保有者は2028年10月16日までに3,000万円の資本金要件を満たす必要があり、高市首相は外国人政策の基本方針を2027年3月までにまとめるとしている。
  5. 05メッセージは明確だ。日本は「実体」をともなう外国資本を求めている。2027年1月4日以降にクロージングする案件は、署名前に自社の保有構造を新しい外為法に照らして確認する。ビザの費用と期間を参入計画に織り込む。そしてナティクシスのように、現地企業の買収を、免許・人材・信頼をいちばん早く手に入れる手段として検討したい。
このページの内容
  1. 01表玄関
  2. 02新しい門番
  3. 03脇の門
  4. 04外国企業がやるべきこと
  5. ?よくある質問

01 · 表玄関外国の買い手にとって過去最高の一年

数字ははっきりしている。10月13日の日経報道が伝えたRECOFのデータによると、2026年1〜9月に外国企業・ファンドが買収した日本企業は326社で、前年同期を20%超上回った。金額は約6.2兆円と40%増え、すでに2025年通年(372件、約6.2兆円で、それ自体が過去最高)を上回っている。同じ9カ月間、日本企業が関わるM&Aの総額は20%減の22兆円だった。つまり、日本の買い手が足を止めるなかで、外国の買い手は加速したのである。

背景には三つの力がある。円安によって、日本の資産はドルやユーロで見て割安になった。東京証券取引所がPBR1倍割れの企業に改善を求め、政策保有株の解消も進んだことで、子会社やノンコア事業の売却が増えた。そして、後継者のいない中堅企業のオーナーが事業を手放し始めている。この流れは長期のデータにも表れている。財務省・日本銀行の統計をもとにした内閣府の資料によると、対日直接投資残高は2025年末に過去最高の61.2兆円となり、1年で7.9兆円増えた。政府の目標は2030年に120兆円、2030年代前半に150兆円である。120兆円に届くには年14%程度の伸びが必要で、これはほぼ2025年の実績と同じ水準だ。

今週は、外国企業がM&Aを使って日本に参入する典型例が出てきた。ブルームバーグは10月20日、フランスのBPCEグループの投資銀行部門であるナティクシスが、東京の産業創成アドバイザリーを買収することで合意したと報じた。同社は2009年に設立され、日本初の独立系ファイナンシャル・アドバイザーとされ、テクノロジー・メディア・通信やインフラに強みを持つ。買収額は公表されておらず、金融庁の承認が条件となる。共同創業者で元UBSマネージングディレクターのゲーリー・チャン氏が、新設される投資銀行・実物資産・M&A事業を率い、チームは2027年1月1日にナティクシスの東京支店に加わる。シティグループ、ゴールドマン・サックス、UBSも今年、東京で幹部級のバンカーを採用している。日本でアドバイザリー事業を一から築くには何年もの関係づくりが必要だが、買収なら四半期で済む。

02 · 新しい門番2027年1月4日、外為法は「5年間の記憶」を持つ

同じ買い手は、より鋭い審査に向き合うことになる。国会は2026年5月29日に外国為替及び外国貿易法(外為法)の改正を可決し、6月5日に公布された。6月29日には対日投資委員会が設置され、9月16日に施行令などが公布された。主な改正は2027年1月4日に施行され、30日間の経過期間を経て、原則として2027年2月3日以降の投資に適用される。委員会は財務省と国家安全保障局が共同で議長を務め、外務省、経済産業省、防衛省が中心メンバーとなる。法律事務所はすでにこれを「日本版CFIUS」と呼んでいる。

外国企業にとって重要な変更は三つある。第一に間接取得。外国投資家が、日本企業の株式を持つ海外の会社の議決権を50%以上取得する場合、その海外での取引に日本での事前届出が必要になりうる。「高リスク投資家」に分類される場合、基準は上場企業で1%、非上場企業ではわずか1株にまで下がる。第二に事後介入権。高リスク投資家が指定業種以外の日本企業の10%以上を取得した場合、当局はクロージング後5年間、調査できる。第三に、重要業種のリストが「その事業が何をするか」を軸に組み直される。サイバーセキュリティ、クラウドとデータセンター、AIと先端ロボティクスが中心となり、磁気センサー、一部の船体製造、特定の医薬品が加わる。

ここで、AIの話とM&Aの話が交わる。外国のソフトウェア企業やAI企業が、日本のデータセンター事業者、ロボティクスのスタートアップ、クラウドの販売代理店に出資する場合、たとえ契約をシンガポールやデラウェアで結んでも、はっきりと審査の対象範囲に入る。運用もすでに本格化している。2026年4月、当局はMBKパートナーズに牧野フライス製作所の買収を中止するよう勧告した。こうした勧告は約18年ぶりだ。また、ヤゲオによる2025年の芝浦電子へのTOBは、約7カ月の審査を経て、リスク軽減措置を条件にようやく認められた。大半の案件は今も承認される。ただし、きれいな案件には、きれいな保有構造と、審査の期間を織り込んだ計画が欠かせない。

03 · 脇の門ビザ、在留手数料、不動産登記

外為法が「誰が買えるか」を決めるなら、入管制度は「買ったものを経営するために誰がとどまれるか」を決める。2026年10月1日、永住許可の手数料は1万円から20万円に上がり、在留資格の変更・更新の手数料は在留期間1年の3.3万円から5年以上の7.5万円まで段階的になった。改定された永住許可ガイドラインでは、10月1日以降の申請に所得要件が適用され、改定全体は2027年4月1日以降の申請に適用される。管理職10人とその家族を日本に赴任させる外国企業にとって、手続き費用は「誤差」から「予算項目」に変わった。

永住許可の手数料1万円 → 20万円2026年10月1日から
在留資格の変更・更新3.3万円〜7.5万円2026年10月1日から
不動産登記新たに所有者となる個人の国籍を記録2026年10月5日から
経営・管理ビザ資本金3,000万円2028年10月16日まで

創業者の道も狭くなった。2025年10月16日以降、経営・管理ビザには、従来の500万円に代わって3,000万円の払込資本金が求められる。加えて、常勤職員1人以上、申請者または職員のいずれかが日本語能力試験N2相当、3年以上の経営経験または関連する修士以上の学位が必要だ。既存の保有者には2028年10月16日までの経過期間があり、今後2年間の更新時に、外国人が経営する小規模企業が影響を受けることになる。5月には5万3,000人の署名を集めた請願が見直しを求めたが、制度は変わっていない。

三つ目の門は不動産である。2026年10月5日以降、個人が土地や建物の所有者として新たに登記される際、その国籍が旅券や在留カードにもとづいて登記所の内部の検索用情報に記録される。公開される登記事項証明書には記載されず、所有を制限するものでもなく、法人は対象外だ。それでも、国はこれまで持っていなかったデータを得る。そしてこの変更は、高市早苗首相が2027年3月の年度末までに外国人の受け入れに関する基本方針をまとめると表明し、与党が外国人による土地取得の規制法案を約束しているなかで導入された。並べてみると方向性は一貫している。日本は外国資本に門を閉ざしているのではない。その資本に「見える化」「定着」「長期的な関与」を求めているのだ。

04 · 外国企業がやるべきこと90日プラン

日本は「実体」をともなう外国資本を求めている。

1〜30日目:保有構造を洗い出す。自社、親会社、ファンド、共同投資家が、直接または海外の会社を通じて株式を持つ日本企業をすべて書き出し、組み直された業種リストと照らし合わせる。とくにクラウド、データセンター、AI、ロボティクス、サイバーセキュリティに関わるものは要注意だ。交渉中の案件が2027年1月4日以降にクロージングするなら、新しいルールが適用されると考え、自社の構造の海外部分が日本での届出を必要とするかを弁護士に確認したい。スケジュールには余裕を持たせる。ヤゲオの審査には約7カ月かかった。

31〜60日目:人のコストを見積もる。在留手数料、経営・管理ビザの資本金、日本語人材の確保を、予備費ではなく参入予算そのものに組み込む。いまの日本拠点が創業者の経営・管理ビザに依存しているなら、2028年の更新を今から計画したい。法人に3,000万円を出資して必要な職員を採用するか、十分に資本のある子会社をつくり、社員を企業内転勤の在留資格で受け入れる形に組み替えるかである。不動産を保有している、あるいは購入予定なら、登記名義を個人にするか法人にするかを意識的に決める。10月5日のルールは個人だけに適用されるが、非居住者による取得後の外為法上の報告義務はどちらの場合にも残る。

61〜90日目:「つくる」か「買う」かを決める。対日投資の数字が示すとおり、2026年にもっとも速く参入した外国企業は「買って」いる。ナティクシスはチームを採用して案件を待つのではなく、関係、実績、規制当局との信頼を持つ創業17年の会社を買った。日本進出を計画する外国企業にとって、小さくてもよく選んだ買収――後継者問題を抱える販売代理店、広告会社、システムインテグレーターなど――は、免許、顧客、バイリンガル人材を一度に手に入れる手段になる。きれいな外為法上の記録は、交渉の武器にもなる。これこそ、Medusa Japanが大阪からクライアントとともに取り組んでいる仕事だ。外国企業を適切な日本のパートナーや買収先とつなぎ、最初の一年を実りあるものにする現地ブランドとAIツールを構築している。

よくある質問

よくある質問と答え

今契約して2027年にクロージングする案件にも、改正外為法は適用されますか?

その可能性は十分にあります。主な改正は2027年1月4日に施行され、事後介入の制度は同日以降に行われる対象投資に適用されます。30日間の経過期間を経て、新ルールは原則として2027年2月3日以降の投資に適用されます。基準となるのは、条件合意書に署名した日ではなく、投資が実行される日です。クロージングが2027年にずれ込む可能性があるなら、新ルールが適用される前提で計画し、自社の構造の海外部分が届出対象になっていないかを確認し、審査の期間をスケジュールに織り込んでください。

当社は外国のAI・クラウド企業で、日本のパートナーに出資します。影響はありますか?

おそらく影響があります。組み直された指定業種は「機能」を軸に整理され、サイバーセキュリティ、クラウドとデータセンター、AIと先端ロボティクスが明記されました。指定業種で事業を行う日本企業への投資は、もともと他より厳しく審査されますが、改正によって間接取得と、一部の投資家に対する5年間の事後介入が加わります。案件が止められるという意味ではありません。大半は承認されています。ただし、パートナーのどの事業がリストに該当するかを早めに特定し、データへのアクセスや経営への関与について明確な説明を用意し、当局から質問がある前提で臨むべきです。

新しい国籍記録のルールは、当社がオフィスや倉庫を購入する場合にも影響しますか?

直接の影響はありません。2026年10月5日に施行されたルールは、所有者として新たに登記される「個人」が対象で、法人は対象外です。既存の所有者にも新たな義務はありません。国籍は内部の検索用情報として保管され、公開される登記事項証明書には記載されません。ただし、非居住者が不動産を取得した場合の外為法上の報告義務は以前から別途あり、与党は外国人による土地取得についてさらなる法整備を約束しています。防衛施設の周辺など、慎重な扱いが必要な場所については、購入前に専門家に確認してください。

経営・管理ビザは、創業者が日本に進出する手段として今も現実的ですか?

現実的ですが、いまは「副業」ではなく「資金の裏づけがある事業」のための道になりました。2025年10月16日以降、申請者には3,000万円の払込資本金、常勤職員1人以上、申請者または職員のいずれかが日本語能力試験N2相当、3年以上の経営経験または関連する修士以上の学位が求められます。既存の保有者は2028年10月16日までに要件を満たす必要があります。多くの外国企業にとっては、十分に資本のある子会社を設立し、管理職を企業内転勤で受け入れ、日本語の要件は現地採用の人材で満たすほうが良い選択肢です。いずれにしても、費用と期間は初日から参入計画に組み込んでください。

執筆

ナン・ジラルダン

Medusa Japan 創業者・大阪

Medusa Japan創業者。大阪を拠点に、日本と世界をつなぐ独立系エージェンシーとして、戦略・市場参入、ブランド・デザイン、プロダクト開発、マーケティングを手がける。このノートを毎週執筆している。

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